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Channel: スポーツナビ+ タグ:アジアシリーズ
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韓国プロ野球のガラパゴス化――アジアシリーズのサムソン敗戦に思う

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2012年、ロッテジャイアンツをFAになったイ・デホ(李大浩)は2度の三冠王という実績を引っさげ日本球界に挑戦した。韓国時代のような高打率は残せなかったものの、2012年にパ・リーグ打点王に輝くなどオリックスでの2年間で期待に応える活躍をした。続く2013年、ハンファイーグルスからポスティングでアメリカ球界に挑戦したリュ・ヒョンジン(柳賢振)は1年目からLAドジャースのローテーションを担い14勝を挙げる等、KBOでプロのキャリアをスタートした選手として初めてMLBで成功を収めた。そして来年2014年にはサムソンライオンズのクローザーであったオ・スンファン(吳昇桓)が阪神タイガースの一員としてNPBの打者に挑む。一見すると国際化が進んでいるように見える韓国の野球界であるが、視線を韓国国内のプロ野球に移すと見落としがちな問題点がある。その問題点が垣間見えたのは先日まで台湾で開催されていたアジアシリーズの準決勝、オーストラリアリーグのキャンベラ戦である。今回のアジアシリーズでは、KBO代表のサムソンライオンズは予選リーグから苦戦を強いられた。韓国シリーズ全7試合で4番レフトを勤めたチェ・ヒョンウ(崔炯宇)を肘の手術のため欠く打線は、韓国シリーズからイ・スンヨプ(李承燁)の打順をひとつ上げ、チェ・テイン(蔡泰仁)、パク・ソンミン(朴錫珉)、イ・スンヨプのクリーンナップで試合に臨むことになった。ボローニャ戦は先制を許す苦しい展開も、最後は5番イ・スンヨプのスリーランホームランで勝ち越し、5-2で勝利した。統一ライオンズ戦では一時統一にリードを許しはしたが、逆転に成功して2点差で7回を迎える。左のワンポイント継投が裏目に出て1点を返されると、8回には勢いづいた統一に追いついかれ延長戦に突入する。しかし10回に代打ウ・ドンギュン(禹東均)が勝ち越しタイムリーを放ち、2イニング目のアン・ジマン(安志晩)が1点のリードを守りきって勝利。予選2試合でサムソンが先発に送り込んだ投手は、共に今年一軍であまり良い結果を残せなかったペク・チョンヒョン(白正鉉)とキム・ヒゴル(金熙杰)であったので、序盤相手にリードを許す展開は想定の範囲内であったと思う。ボローニャ戦はそれでも打線が相手投手を打ち込めば勝てると踏んでの起用だったと考えられるが、統一戦は既に準決勝進出が決まっていたのでその後の試合を見越した起用だったように思う。先発投手としての実績があるペ・ヨンス(裵英洙)、チャ・ウチャン(車雨燦)を温存し、韓国シリーズの初戦に中継ぎで2イニングを好投したキム・ヒゴルを統一戦で試した。結果は辛勝であったが、最悪負けていたとしても準決勝と決勝をペ・ヨンスとチャ・ウチャンで取ればいいという計算であった。そして迎えた準決勝、キャンベラ戦。サムソンの先発はシーズン14勝4敗の右腕ペ・ヨンス。今シーズンは先発ローテーションの3、4番手として26試合に先発して最多勝のタイトルを獲得した一方、防御率は4.71と振るわず打線に助けられた印象があった。韓国シリーズでは2度登板(4戦目先発、6戦目リリーフ)したが不本意な投球に終わった。この試合でもシーズンや韓国シリーズ同様に安定を欠き、3回3失点(自責点2)で降板する。 2番手でマウンドに上がったのは左腕のチャ・ウチャン。今シーズンは主に7月後半以降に先発ローテーションの5番手として12試合に登板しながらリリーフとしても31試合に登板して、10勝7敗3ホールド、防御率3.26を記録した。韓国シリーズでは7試合中5試合でリリーフ登板し12回2/3を2失点に抑えた。しかし交代直後の4回に連打とサードのパク・ソンミンの悪送球で2失点を喫してキャンベラに3点のリードを許す。サムソンは5回に1番チョン・ヒョンシク(丁亨植)の適時打で1点を返すと4番パク・ソンミンの併殺崩れの間にパク・ハンニ(朴漢伊)が好走塁を見せて一気に2点を取りキャンベラに追いつく。チャ・ウチャンは5回以降完全に立ち直り、9回までの5イニングを1安打無失点に抑え試合は硬直状態に。延長戦に突入するとサムソンはアン・ジマンを投入する。今シーズンは54試合に登板して6勝2敗22ホールドの成績を残した豪腕投手。クローザーのオ・スンファンが不在のアジアシリーズではここまでの2試合に9回から登板して、3イニングを1安打無失点に抑え6三振を奪っている。1死1塁となって迎えるのはここまで4打数無安打2併殺と当たっていない5番マーフィー。アン・ジマンがフルカウントから投じたストレートをライトスタンドまで運びキャンベラが勝ち越し。結局サムソンは5-9で敗れアジアシリーズの舞台から姿を消した。今回のアジアシリーズでサムソンは投手ではユン・ソンファン(尹盛桓)、チャン・ウォンサム(張洹三)という左右のエースを欠き、24試合に先発したバンデンハークも参加を見送った。リリーフでは移籍交渉中のオ・スンファンと肘の手術を行うクォン・ヒョク(權奕)が参加しなかった。打者ではチェ・ヒョンウの他にショートのキム・サンス(金相豎)やサードとセカンドを守ることができるチョ・ドンチャン(趙東贊)が不在であった。(サムソンの投手成績は以前のエントリーをご参照ください。)確かにサムソンはフルメンバーで戦えていないのでそれを敗戦の弁とすることは不可能ではない。事実、予選では今シーズン1軍での先発登板がない投手を先発に起用せざるを得ないことで苦しい試合運びになった。だが予選2試合のどちらかが敗戦になっていたとしても、キャンベラ戦で敗戦するのとは意味が異なっていただろう。サムソンは韓国シリーズの時からセカンドにキム・テワン(金泰完)、ショートにチョン・ビョンゴン(鄭炳坤)というこれまで実績のない2人を起用せざるを得ない状況であった。確かに今シーズン全試合に出場した主砲チェ・ヒョンウの不在は大きいが、野手に関してはそこまで問題があるオーダーではない。外野では、相手が右投手先発時やパク・ハンニ、ペ・ヨンソプ(裵榮燮)の不調時にスタメンに名を連ねる等、今シーズン躍進して守備・走塁だけの選手から脱却しつつあるチョン・ヒョンシクがいるので、オーダーを組むのには問題が無い。投手は左右のエース不在という大きなハンデを背負っているが、先発としての実績があるペ・ヨンスとチャ・ウチャンがいるので、準決勝と決勝だけなら問題ない。キャンベラ戦にはそのペ・ヨンスが登板し、キャンベラ打線に打ち込まれるや決勝での登板も考えられるチャ・ウチャンをつぎ込んできた。これは韓国シリーズ第4戦でも見せた、一戦必勝の必死の継投策である。現有戦力の中では勝つための最大限の采配であり、一軍レベルの短期決戦向けの戦術でもある。それでも結果として守備の乱れもあって5失点してしまうことになった。そこまでの展開に敗戦の原因を見つけることは決して難しくはない。先発投手の乱調や内野守備の乱れ、チャンスであと一本がでない打線。しかし本質的な問題はそこではないと考える。注目したいのは10回に登板したアン・ジマンのストレートがスタンドまで運ばれて行ったことである。ボローニャ戦と統一戦で打者をねじ伏せたストレートが軽々と持って行かれてしまったのは衝撃であった。もちろん出会い頭の事故と言ってしまえばそれまでだが、その原因をここ数年の韓国球界に求めることも可能ではないのか。参考:アン・ジマンの成績(2011~2013)以下は今年の韓国プロ野球外国人選手の一覧である(太字は韓国人選手も含めてリーグトップの項目。勝ち数はセッドンとペ・ヨンスが同数でトップ)。表の「年度」の項目は2013年に所属した球団で初出場した年度、「年齢」は2013年11月末日時点のものであり、「契約金」と「年俸」の単位は全てドルである。成績がすべて投手成績だけど打撃成績はないのか、と思われる方がいるかもしれない。しかし今シーズンの外国人選手の打撃成績は私が知っている限りでは、アンソニーの1打数0安打1三振だけである。これはDH解除のために投手がバッターボックスに立ったものなので、今シーズン外国人野手はひとりもいなかったことになる。外国人野手の不在は今年だけではない。各球団2人まで外国人と契約することができるが、2012年も全員が投手であった。 2010年以降の外国人野手を示すと以下の通りになる。外国人野手との契約は2011年3人、2010年2人となっており、ここ何年間か外国人野手はほとんど存在感のない状態であった。野手は韓国野球に適応するまで時間がかかる場合が多いため、即戦力が求められる外国人選手との契約は投手が優先されてきたことが原因と見られる。実際に2010年以降の外国人野手が期待通りの活躍をしたとみることは難しい。だが、一発の魅力がある選手は多かった。東洋人ではなかなかホームランにできない球をパワーでスタンドまで運んでいくこともできる。ここ数年、韓国ではシーズン中のコンディションが良い時期に外国人野手と対戦できない状態だった。外国人野手に自分のストレートがどこまで通用するのかを試す機会が失われたことは今回の結果に少なからず影響を与えたのではないか。今春開催された第3回WBCは今までと違い本戦の1次リーグからアジア以外の国との対戦があった。その時韓国はオーストラリアにこそ勝利できたが、中南米選手を中心とするオランダには0-5と完敗した。その試合でホームランは飛び出さなかったものの、力強い打球が鋭く内野を抜いていき、オランダには多くのヒットが生まれた。今回のアジアシリーズ、そして2013年WBCを振り返ってみると、対戦相手として韓国人打者(あるいは韓国人打者のような東洋人)しか想定しなくてよい韓国のプロ野球は「ガラパゴス化」が進行しているとみることもできるように思う。もっとも、この「ガラパゴス化」が今後も進んでいくかどうかはわからない。来シーズンから新球団のKTが参入し、2015年には1軍が10球団体制となることと関連して、KBOは外国人枠の拡大を決定した。現在は各球団2名(NCは3名)となっている外国人枠をそれぞれ1名増やす(試合出場は2人)こととなったのである。この拡大には、枠の全てを投手のみまたは野手のみで埋めることができないという制限がある。そのため2011年以来の外国人野手復活の可能性が高まった。韓国では最有力選手の海外流出が相次ぐ一方で、最近はFA選手が国内で高額契約をするケースが多く見られるようになってきた。さらにはNPBに進出する韓国人選手の年俸も高騰してきたため、今後もKBOからNPBへの韓国人選手の移籍が活発化するかは未知数である。それだけに韓国プロ野球リーグの今後がナショナルチームの発展を決めると言っても過言ではない。外国人選手が投手ばかりという状況はもうひとつの弊害を生んできた。外国人投手を中心としたローテーションを組むため、国産先発投手の育成がやや滞っていることである。こちらは「ガラパゴス化」とはむしろ正反対の問題である。先ほどの表でわかるように、韓国では成績が多少悪くても外国人投手に積極的にイニングを消化させる傾向がある。その結果が、規定投球回数到達25投手中13人が外国人投手という状況である。もちろん各球団エース級の韓国人投手を抱えているが、日本の球団に比較して自国選手だけで先発投手の層の厚さを出すことはなかなか難しい。今年のWBCでも有力投手が出場辞退をして追加招集をする際に、それに次ぐレベルの先発投手層の薄さが問題になった。そのような中、今年から1軍に参戦したNCではイ・ジェハク(李在學)が防御率2.88(リーグ2位)、WHIP1.17(リーグトップ)、10勝5敗で新人王を獲得した。イ・ジェハクは2011年オフの2次ドラフト(MLBのルール5ドラフトを模した制度)でトゥサンから新球団のNCに移籍した選手である。新球団の参入によって今までチャンスを得られなかった選手が活躍する事例もあるので、今後KTを加えた10球団体制になることで選手層の薄さという韓国プロ野球の弱点が解消できるのか、それともリーグのレベル低下を招いて結果的にトップ選手養成に問題が生じることとなるのか。その鍵を握るのは各球団が補強する外国人選手にあるのではないかと思う。次回のWBCまで韓国球界の動向に目が離せない。

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